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2006.07.17 Monday 00:46
『弥勒』 篠田 節子
弥勒 篠田 節子 出張で訪れたパスキムという国の仏教美術に魅了された永岡は、パスキムで解放戦線という名のクーデターが起こっていることを知る。 しかし小国ゆえに日本に情報が全く入ってこないことに焦れ、単身パスキムに潜入した永岡だったが、彼の目の前に現れたのは虐殺された僧侶達、壊された仏具たち、そして無人の町だった。危険を感じ引き返そうとした永岡はしかし、革命軍に捕らえられ収容されてしまう。 革命軍は贅沢を否定し、身分をなくし完全平等社会を作り、人々は畑を耕し自給自足の生活をしていくことこそが幸せなのだと説き、強制キャンプでの生活を強要する。 そして永岡も、その生活を共にすることを強いられてしまう。 なぜ革命軍はこのようなクーデターを起こしたのかという思想の背景、そしてその革命の過程から最期までを、宗教や信仰、文化社会が生み出す身分差別に貧しい階層などの問題点を指摘しながら、書き綴ってあります。 久しぶりの篠田節子さん作品。 何でこの人はこんな話がかけるんだろう・・・といつも感動してしまいます。でも今回のこの作品は、感動というよりとにかく重い。 途中、あまりに同じことの繰り返しで、でもどんどん劣悪になる環境の中での生活に、読んでるほうが苦しくなってきました。 人々が死に絶えたキャンプ。 まだ人が生き延びているキャンプでは、地雷を埋め、逃げ出せないように閉じ込める。 餓死に感染病。 理想と突きつけられる現実。そして夢想。 家族とは何か。絆とは何か。 神や仏に祈り、救いを求めることは必要なことなのか。 革命軍のやってることに対して「おかしい。それは間違ってる」と思っていたのに、だんだんと「それは本当におかしかったのかな?全部を否定できないな・・・」と考え込んでしまったり、頭の中ぐるぐるでした。 とにかく壮絶だった中盤から後半・・・最後はスルっと終わってしまったような感があるけど、ここからが新たな始まりでもあるんだなと感じさせられました。 |
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