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2007.07.09 Monday 00:29
『鳥類学者のファンタジア』 奥泉 光
その人物の正体を探るべく、フォギーと弟子の佐知子ちゃんは以前フォギーの祖母の事を調べていたフリーライターの加藤さんの元を訪れる。 そこからフォギーは1944年のナチス支配下のドイツへとタイムスリップしてしまい・・・ 京極さんの本も分厚いけど、奥泉さんの本も分厚い。 読み応えで言うなら、奥泉さんのほうが勝っているんじゃないでしょうか…。 読み応えというか…字のつまり具合? 何でこんなに長いんだ?!何だこの字は!って思っちゃうくらい、詰まってます。 京極さんの作品は理路整然としていて薀蓄がみっちり詰まっているのに対して、奥泉さんの作品は読み手を迷路に誘い込むような…一緒になってぐるぐるさせてしまうところがあります。 この作品もだけど、以前読んだ『モーダルな事象』も主人公の思考垂れ流し作品。 あっちいってこっち行って、あ、そういえばこんなこともあるんだよ。 まとまりのない飛びまくりの思考。かと思えばじつは最後はしっかりまとまって…とみせかけて実は飛んでっちゃったり…? とても独特な文章なので、好き嫌いが別れるんじゃないかな。 はまると、たまに「ぐふっ」と含み笑いをしながら読めちゃいます。 1944年のベルリンでの生活はヴィラが中心となっているので風景にあまり変化はないけど、ナチの将校に尋問されている時のフォギーの心境とか挙動不審っぷりや、ヴィラで出会った人たちとの交流、そして水晶宮への不思議な旅だとか、とっぴな設定も奥泉さんならではの書きっぷりで、違和感なく物語の中へ入り込めました。 タイムスリップしちゃうのに、フォギーも佐知子ちゃんもそこまであわてないんですよね。 おいおい、って言いたくなるくらい拍子抜けな反応。 なのにそれが自然で、突飛なことがおこっても綺麗に作品の中に溶け込んでる…うまいなーと思いました。 フォギーのほのかな恋にドキドキしたり、怪しい人っぷりに笑ったりしつつ、運命に翻弄されるフォギーの祖母の姿にちょっと目頭が熱くなり…。 フォギーがピアノを弾いている場面では、読み手まで熱くなってしまいます。 最後の最後まで楽しませてくれて、満足です♪ ジャズに関してとっっっても疎いので、今度ジャズを聴いてみようかなと思いました。 これは映像でも楽しいかも〜。 2006.05.23 Tuesday 00:48
『モーダルな事象』 奥泉 光
モーダルな事象 奥泉 光 主人公の桑潟幸一郎・通称「桑幸」は短大の助教授。精神の箍がすっかりゆるみ、だれだれになったダメ助教授。そんな桑幸の下に、とある出版社の編集者から、雑誌掲載の為の解説を書いて欲しいと無名作家溝口俊平の遺稿が持ち込まれた。 くず同然と思われていたその遺稿、雑誌にて発表されると思わぬ反響をえたのだが、その担当編集者が首なし他殺体で発見され、また同じく溝口俊平の本を出したいと言ってきた他社の編集者も殺されてしまう。 やー・・・長かった!! 通勤時間を使っての読書なので、1日に読める量って結構少ないんです。でも大抵なら1日で1冊読み終わるのに、これは3日かかりました 副題は『桑潟幸一郎助教授のスタイリッシュな生活』。確かに、ある意味とてもスタイリッシュな生活。 普通の、でもちょっとダメダメなしがない助教授でしかなかった桑幸が、アトランチィスコインというものに関わってしまった為に、現実と非現実を行き来しだしちゃいます。 非現実といっていいのかな。そこはもうファンタジー・・・というかSF?の世界になってるような気もします。 物語は桑幸と、編集者殺害犯を見つけようと謎を追う女性シンガー兼ライター&元夫の元夫婦刑事の2つのパートから成ってます。 桑幸のパートはとにかくはちゃめちゃ。 アトランチィスコインのせいで、彼は現在と過去を行ったり来たり。桑幸の千千に乱れた思考がそのまま文章になってるので、とにかく文字がつまってます。 そして色んなところに飛んだりもしてます。 関係のない事のほうが多いんだけど、でも桑幸が見たり聞いたり体験したりしてることは、事件にも大きくかかわりのあることなんですね。 だからつい隅から隅まで読んじゃう。 元夫婦刑事コンビは、地道に推理を進めていき東奔西走。でもそのキャラが面白い。時にぶっ飛んだ素人丸出しの推理をしたかと思えば、緻密に周りを固めていったり・・・。 ここまで長くなくても・・・と思ってしまうのですが、まあ楽しく読めました。 |
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